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一週間 -その5-<前編>



 ヴァネースは、走る列車の窓の外の景色を眺めながら、小さい頃から母親に言われていたことを思い出していた。

「健豪。あなたは長男なのに、どうしてそんなに落ち着きがなくってお調子者なの。よーく物事を考えて行動しないと、いつかとんでもない目に合うわよ」

(ママの言った通りだ・・・。俺は本当にお調子者のすっとこどっこいだ・・・)
 視線を隣にやると、孝天が自分の肩にもたれてフガフガと、向かいの座席では阿旭と仔仔がスヤスヤクピクピと重なる様に眠っている。

 ヴァネスは昨夜、部屋に戻ると温泉に着て行くための服を決める為、一人でファッションショーを繰り広げた。それから、シャワーを浴びて寝坊しない様にといつもより早くベッドに入った。だけど、自分では気づてなかったが興奮していてなかなか眠れず、ベッドの中で今日のことをあれこれと考えていた。

 明日、仔仔の奴、ちゃんと起きれるのかなぁ。何してるか知んないけど、帰ってきてからずっと孝天の部屋にいりびたって、まだ部屋に戻ってないみたいだし。いつもみたく夜通し話してんじゃないだろうな。だったら明日はギリギリまで寝てて朝食は抜きだな。まーた電車の中でお菓子食べまくるんだろうなぁ・・・。さっきも帰りにコンビニでお菓子買いまくってたもんなぁ。ったく、仔仔はいつまでたっても子供のまま何だから・・・。でも、ま、可愛いっちゃー可愛いけどな。最近、ちょっと生意気だけど。そう言えば、お菓子、みんな四つづつ買ってたな。きっとあれみんなに電車で配るつもりだぜ。やれやれ。
 孝天は朝は心配ないと思うけど、仔仔につき合ってたらわかんないな・・・。あいつも眠り姫だからな。温泉は山の上で寒いから寝不足で体調崩して喘息でなきゃいいけど・・・ま、あいつのことだ、俺が心配しなくてもちゃんと考えてるよな。明日は孝天も子供返りだな。あいつ大人ぶってても、四人だけになると急にガキみたいになっちまうし、仔仔と温泉ではしゃぎまくる姿が目に浮かぶぜ。でもまぁ、あいつを甘やかしてやれるのって俺と阿旭だけだからな。いいけどさ、根は可愛い奴だから。ふっ。
 阿旭は時間をきちんと守るし、問題はないな。さっき興奮して眠れないって電話がかかってきたけど、ま、寝坊することはないだろうし。けどまた、赤ん坊をあやすみたいに仔仔をかまいまくるんだろうなぁ。まぁ、山の上の温泉だとパパラッチもいないし・・・。あれが阿旭のストレス解消でもあるからな。ふふっ。  
 でも、あれだよな、又、仔仔がお菓子を一人一人に渡しながら「ちゃんと考えて二日で食べなきゃ駄目だよ」とか言って、俺が「その言葉、仔仔にそのまま返す」とか言って、阿旭が「せっかくだからみんなで何かして遊ばない?」とか言って、孝天が「言うと思った」ってトランプを用意してたりして・・・。
 はぁ~、仕方ねぇなぁ。でも、ま、つき合うか。せっかくの『一等賞、列車で行く温泉旅行』だしな。四人で揃って遊ぶってことも最近はなかなかなかったし。
 三人共、仕事の移動の時は寝てるくせ、こーいう時は興奮して元気なんだよなぁ。また俺だけ寝てたら、きっと三人から文句言われたり、悪戯されたりするから、さっさと寝て明日はあいつらの相手してやるか・・・。

(それが、こーだよ)
 ヴァネスは深いため息をついた。
(相手をしてやろう何て考えた俺が馬鹿だった。だいたい俺は一体、何の為に日本に来たんだよ。三人のお守りから解放され思い切り羽を伸ばす為じゃなかったのか・・・)
 頭の中に飛行場で三人に偶然会ってからのことが走馬灯の様に甦ってきた。
(何でこいつら全員こんななんだよ。人の苦労も知らないで・・・)
 とか何とか言いながらも、口を開けて寝ている阿旭が喉をやられないかと心配したり、夢を見ているのか阿旭の膝枕でウ~ン、ウ~ンと唸っている仔仔の顔を覗き込んだり、自分の肩にもたれ、何度もズレ落ちそうになる孝天の頭を手でそっと直してやったりするヴァネス。
(けど、仔仔の奴、たった一泊二日なのにすごい荷物だな)
 仔仔は巣鴨に背負って行ったリュックの他に、パンパンに膨れたヒヨコさん模様の大きな布袋を持っていて(小学校の頃からお気に入りで、体育着入れに使用していたもの。あちこちほころびがきていたが孝天に繕ってもらい再利用中)、それを大事そうに抱えて眠っていた。その袋を仔仔は今朝から誰にも触らせようとせず、中身を聞いても「うふふ」と笑うだけだった。
(まさかあれ、みんなおやつじゃないだろうな。でも、何か軟らかくてふかふかしてるんだよな・・・)
 そんなことを思いながら、軽く揺れる列車の中、一人窓の外を眺めていたが、朝早かったこともあり、とうとうヴァネスにも眠気が襲ってきた。
「ふわ~っ」
(まだお昼にもなってないし、俺も一眠りするかな・・・)
 そして、間もなくヴァネスも深い眠りについた。

 電車に乗って約2時間。やがてお昼になろうとするころ、体内時計でお昼を感じた仔仔が目を覚ました。
「う~ん」
 阿旭の膝から身体を起こすと、阿旭は窓にもたれ、向かい側の座席では孝天とヴァネスが寄り添う様に眠っていた。
(お腹空いた・・・)
 孝天の手首の腕時計を見ると、間もなく12時になろうとしていた。
 その時、車両のドアが開き、何やら美味しい匂いが漂ってきた。見ると、丁度、お弁当売りのワゴンがやって来るところだった。
「阿旭、お昼だよ・・・」
 仔仔は阿旭を揺すって起こそうとしたが阿旭はピクリともしない。
「孝天、ねぇ、孝天、起きてよ。お弁当買って。孝天ってば・・・」
 孝天もぐったりと死体の様に眠ったままだ。
「ヴァネース。起きて。お弁当だよ」
 三人は目を覚ましてくれないのにワゴンはどんどん近づいてくる。日本語は出来ないし、どうやって注文すればいいのか分からない。
(どうしよう・・・・)
「孝天、孝天ってば。お昼ご飯が行っちゃうよ!!阿旭、ねぇ、ヴァネース!!」
 しかし、ここで大事なお昼を逃す訳にいかない・・・。
 仔仔は勇気を振り絞り、腕を耳につけてまっすぐ高く上げた。長身の為、座高も十分に高い仔仔の手は校庭のフラッグポールの様に高く目立った為、お弁当売りのお姉さんもすぐに気づいたらしく、通路をやって来たワゴンは仔仔のところでぴたりと止まった。
「お客様、お待たせ致しました。何になさいますか?」
 にっこりと営業スマイルでマニュアル通りのお姉さんに、仔仔は眉を寄せ真顔で言った。
「ミ、ミートプリーズ・・・」

 飛行機の中と違ってミートもフィッシュもなかったが、仔仔は何とかお弁当を四つ確保することができた。
「みんな、起きて!!お昼だよ!!お弁当食べるよ!!」
「ン~」
 クンクンと鼻を鳴らし匂いに反応した阿旭がまず目を覚ました。
「ヴァネース、孝天!!」
 仔仔はヴァネスの肩を激しく揺すった。
「ふわ~。何だよ・・・」
「お昼だよ。お弁当食べるよ」
「あぁ?もうそんな時間?おい、孝天、起きろ、昼飯だってさ」
 ヴァネスは自分の肩で寝ている、孝天を肘でつついて起こした。
「う~ん」
 孝天は目を閉じたまま、迷が見たら失神しそうに色っぽいしかめっ面をしたかと思うと、逆方向に寝返りをうった。
「ほら、起きろ」
「仕方ないな~もう。孝天、朝だよ」
 仔仔は立ち上がって眠っている孝天の唇に、口づけるふりをした。
 その瞬間、孝天はパチッと目を覚まし、仔仔の顔を押しのけた。
「フニュ」
「・・・・・仔仔、今、俺に何しようとした・・・」
「ほ~らね。いっつもなんだよ。僕がチューしようとすると、必ず目を覚ますんだから。女の人だと平気なくせ~」
(い、いつも・・・?!)
 阿旭は驚いて仔仔を見たが、仔仔は全く意に介してない。
「お弁当食べよう。はい、マクノウチベントー。種類は違うけどみんな同じ値段だからね」
 仔仔はいそいそとお弁当をみんなに配り、席に深く腰掛けるとお箸を手に挟んだ。
「じゃぁ、はい。いってきまーす!!(注:いただきます)」
「仔仔・・・」
 ヴァネスが仔仔をジロリと見た。
「なに?」
「その弁当、いくつめだ?」
「え?」
 仔仔はギクっとした。
「い、いっこめ・・・」
「ふーん」
 三人の冷ややかな視線がに仔仔の口元に集中した。
「口の横にごはんつぶついてるぞ」
「え?」
 仔仔は舌で確認すると、舌先が覚えの有る小さな固まりを感知した。
「えーっとぉ、これは・・・」
「こいつは・・・・。あれほどパルコの仕事があるからダイエットしろって言われてるのに!!」
「だって・・・」
「だって、じゃない!!」
「でも・・・」
「でも、じゃない!!」
 実はさっきお弁当を売りに来た時、みんなが楽しみにしていた名物「トウゲノカマメシ弁当」の姉妹品、「オヤマノカマメシ弁当」を買おうとしたのだが、人気商品だけあって残りが後一つしかなかった。取り合いになるのを恐れた仔仔は、みんなを起こす前にそれを一人でこっそりと平らげていたのだった。
「いいじゃない、ヴァネース。今回は特別許してあげようよ。せっかくの列車の旅なんだから」
「ほら~」
 庇って貰って、仔仔は阿旭にぴったりと寄り添った。
「また阿旭はそうやって仔仔を庇う。甘過ぎだよ!!おい、孝天、お前からちょっと仔仔に説教してやれ!!」
 だが、孝天からは何の反応もない。
「孝天?」
 ヴァネスは孝天の顔を覗き込んだ。
「え?わりぃ、何だって?」
 孝天はさっきから自分のお弁当をじっと見つめたまま何かを考え続けていた。
「どうした?弁当がどうかしたのか?」
「うん・・・。なぁ、みんな、このお弁当、何かおかしくないか?」
「え?そう?」
 阿旭がクンクンと匂いを嗅いだ。
「そうじゃなくて、何か見た目が不自然なんだよ」
「見た目?」
 三人は孝天のお弁当を覗き込んだ。
「日本のエキベンは弁当職人さんたちが研究に研究を重ねて作ってるんだ。だから、味は勿論のこと、栄養のバランス、見た目にもとても気を使ってある」
 三人はうんちくたれの孝天の話に耳を傾けた。
「特に幕の内というのは、弁当界の最高峰と言われ、言わばその会社のお弁当の代表、顔みたいなもんで、それだからこそ、各社共に社運を賭け競って開発を続けている」
「うん、うん」
「だけど、この弁当には何かが欠けてる。揚げ物、煮物、蒸し物、野菜に肉類に果物。おかずの種類は豊富だし、一見バランスが取れている様に思えるけど、見た目が何だか地味なんだ。マクノウチってのは華やかな存在でもっとこう、そう目にも楽しく色どり良く並べてあるはずなのに・・・」
「なのに?」
「このお弁当には華やかさがない」
「華やかさ?」
 三人は顔を見合わせた。
「そういえば、お醤油っぽい色が多い様な・・・」
 阿旭が言った。
「華やかさを演出するのに重要な色・・・それは」
「それは?」
「黄色だ」
「黄色?」
「そうだ、黄色が足りない」
 何のことだかさっぱり分からないヴァネースはお弁当を見た。
「って言うと・・・」
「そう、阿旭が大好きな卵焼き・・・」
「え?」
 阿旭も自分のお弁当を見た。
「本当だ、黄色がない!!」
 ヴァネスも自分のお弁当をもう一度見た。
「俺のも!!」
 見つめ合う阿旭、ヴァネス、孝天。
「おい、孝天」
 ヴァネスがふと見ると、仔仔はさっきからお弁当の蓋を立てたままにしている。
 二人は頷き合って再び仔仔を見た。目を反らし、宙に視線を浮かせる仔仔。
「えーっと、僕、お茶買ってこよっかなぁ・・・」
 仔仔がお弁当を持ったまま席を立とうとしたその瞬間、
「ちょっと待った!!」
 ヴァネスの言葉を合図に、仔仔の向かいに座っていた孝天が長い足で通路への出口を遮った。
「俺たちの卵焼き取ったろ・・・」
「な、何言ってるの、ヴァネース?あっ!!」
 ヴァネスは仔仔からお弁当を取り上げ蓋をあけた。見ると白ご飯の隣に一つ(正版)、マカロニサラダの下に敷かれたレタスの後ろに三つ(盗版)卵焼きが隠されていた。
「こいつ!!孝天、押さえろ!!」
 孝天が逃げようとする仔仔を羽交い締めにすると、ヴァネスは立ち上がって、仔仔のこめかみを両手をグーにしてグリグリ~っと締め付けた。
「いたーい!!」
「俺たちのものだけならともかく阿旭からも取るなんて!!いつもお前を庇ってくれるのは、どこの誰なんだ?!え?」
「痛い~~~」
「謝れ!!」
「ごめんなさーいっ~」
「もうしませんは?!」
 孝天が腕を絞る。
「もうしませーん」
「もういいじゃない、二人とも。卵焼きくらい・・・」
 優しい阿旭は、又も仔仔を庇った。
「ほーら」
 仔仔は又、阿旭にぴったりとくっついて「ね~」という表情をした。
「俺のは返してもらう!!」
「俺のも!!」
 ヴァネスと孝天はそれぞれ一個ずつ卵焼きを奪還した。
「あー、僕の卵焼き~」
「俺たちの、だ!!」
 ヴァネスはそう言うと玉子焼きを口に放り込んだ。
「あっ!」
 又、孝天が何かに気づいた。
「どうした、孝天!!」
 孝天は立ち上がると、又、仔仔を羽交い締めにした。
「たこさんか?たこさんだったのか?!」
「な、何のこと・・・」
「しらばっくれるな!!」
「なんだ?」
「ヴァネス、俺の弁当をよく見ろ」
 ヴァネスは孝天のお弁当を見た。
「仔仔、白状しろ!!たこさんか?たこさんだったのか?!」
 孝天は、仔仔の首に腕を巻き付けた。
「う・・・。ち、違います・・・。な、斜めに三つ線・・・」
「たこさん・・・斜めに三つ線・・・このくぼみにかすかな赤み・・・。はっ!!ウインナーか?ウインナー何だな、孝天!」
「没錯!!」
「孝天!!」
 阿旭も自分のお弁当に異変を発見したらしい。
 黙ってお弁当箱のふたを、仔仔を羽交い締めにしたままの孝天の鼻先に持っていった。
「こ、この残り香は・・・!!」
 阿旭は頷いた。
「うささんか!!うささんだったのか!?」
「うささん?はっ!りんご、りんごだな、阿旭」
 ヴァネスもふたの匂いを嗅いだ。眉間に皺をよせ頷く阿旭。
 孝天が更に締め上げる。
「う、く、苦しい」
「仔仔!!どうなんだ」
「う、うささんでした・・・」
「仔仔~~~~!!」
「孝天しめろ!!泣かしていいぞ!!」
「白兎の阿旭からうささんリンゴを取るなんて」
「あーん、ごめんなさーーーい」
「阿旭も言ってやれよ!!」
 ヴァネスが言った。
「でも・・・」
「そうだ、言う時には言わないと。甘やかしてばっかじゃ駄目だ!!」
 孝天も言った。
「ごめんですむなら警察はいらねぇ・・・(超小声)」
「分かったか!!くのぉくのぉくのぉ~~~」
「じゃおでん、ぐるじ~~。だずげで~~~」

「ママー。あのお兄ちゃんたち何してるの?」
 狭い座席でお弁当をめぐって子供の様な小競り合いをする四人。ただでさえ大きな身体とただごとでない男前ぶりで目を引くのに、今時にない騒々しさにいつの間にか車内の視線が集まっていた。 
 駅弁ごときで、子供の兄弟喧嘩としか思えないレベルの低い争いを繰り広げている四人組が、アジア中で億というお金を稼いでいて、やがてアジアの最強カレンシー、円もがっぽり稼ぐことになる若者たちだとは車内の誰も想像すらしていない。
「あの可愛いお兄ちゃんが、他のお兄ちゃんのお弁当のおかず食べちゃったんだって。大きいのにおかしいわねぇ」

「三人とも座って・・・」
 回りの気配に気づいた阿旭の言葉に、ヴァネスと孝天は仔仔を睨んだまま座席に腰掛けた。
「仔仔のせいだからな!!」
 小声でなじるヴァネス。
 仔仔は視線を反らし、口をヘの字にして反省の様子はない。
「何だよ、その態度!!」
 ヴァネスは仔仔の足を軽くつついた。
「いた~い」
 生意気にも上目使いでヴァネスを睨みつけ、つつき返す仔仔。
「こいつ!!」
「蹴んなくてもいいじゃん」
「言ってもわかんないからだろ!!」
 仔仔は目に涙をいっぱいにためた。
「あー、駄目駄目。そんなの嘘泣きだって分かってるんだから」
 全く相手にしないヴァネス。
「もう、いいからとにかく食べよう。仔仔、もうこんなことしちゃ駄目だよ」
 阿旭が諭す様に言った。
「うん。ごめんね、阿旭」
 仔仔は例によってヴァネスにつーんとして、阿旭にだけしおらしく謝った。
(あ、また!!こいつ~~~)
「孝天、後で仔仔によーく説教しとけ!!」
「今度やったら玉子と一緒に温泉に沈めるからな」
 それを聞いた仔仔は、ビクっとして、孝天と目を合わせない様にこそこそと背を向けてお弁当をかきこんだ(←自分の飼育係の孝天が、実は誰より怖いらしい)。
 
 やがて列車は目的の駅に着いた。
 あれだけのバトルをやっても、結局は仲が良い四人。お弁当を食べて一眠りすると、まるで何もなかったかの様に元通り、和気あいあいとすっかり元の仲良しに戻ってはしゃぎながらホームに降り立った。
「着いた~!!うわ~、雪が積もってる~」
 仔仔が言葉を発すると息が白くなった。
「うわ~、寒みぃ~~~!!」
 LA出身で寒さに弱いヴァネスが身を縮めた。
「早く温泉に入りてぇ!!」
 基礎体温が高く普段は暑がりの孝天も思わず震え上がった
「温泉につかって熱燗で一杯やりたいな」
「お、いいねー」
 孝天の言葉にヴァネスがすぐさま同意する。
「僕もー!!」
「なに言ってんだよ。おちょこ一杯で酔っぱらっちまうくせ」
「そーそー。仔仔はマミーにしとけ、マミーに」
「なんだよぉ。そうやっていっつも二人で僕をのけものにするんだからぁ」
「ほら、ほら。いいからとにかく早くお迎えのバスを探そう。このままじゃ寒過ぎるよ」
 阿旭が年長らしく三人を促した。巣鴨とはまるで別人だ。
「ねぇ、阿旭、あれじゃねぇの?」
 孝天が『お山の上旅館』とかかれた小型バスを見つけて指差した。窓ガラスに『F4御一同様』というはり紙も見える。
「本当だ。良かった~。早く乗っちゃおう」
 阿旭を先頭にヴァネスと孝天が続いてバスに乗り込んだ。
「暖房が効いててあったかーい」
「まるで、天国だ」
「温泉はもっと天国だぜ」
 見渡すと車内には自分たち以外誰もいなかった。
「やった、貸し切りじゃん」
「じゃ、俺、ここにしようっと」
 阿旭は一番後ろの広い席にどっかと腰を降ろした。
「バスなんて乗るの、久しぶりだよ」
「じゃ、俺、阿旭のとーなり」
 ヴァネスが阿旭の左隣に座った。
「じゃ、俺、その反対のとーなり」
 こうして三人は一番後ろの席に並んで座った。
「あれ。孝天、仔仔は?」
「お菓子買いに行ったんじゃねぇの。何か昨日、ここの駅にしか売ってないお菓子があるんから着いたらまずそれ買うって言ってたから」
「ふーん」
 暫くすると、寒さと嬉しさで頬を赤く上気させた仔仔がバスに乗り込んできた。
「みんなー、オヤマノオンセンポッキー、あった~!!最後の一個だったんだよ~。超ラッキー。良かったぁ~。あれ・・・」
 仔仔は一番後ろの座席に阿旭を真ん中に仲良さそうに座っている三人を見た。普通だったら大人でも軽く四人は軽く座れそうな後部座席だが、大きな三人が並んで座っている為、孝天の隣にやっと子供が一人座れる程度しか空いてない。どうみても仔仔の座れるスペースはなかった。
「あ、仔仔。俺たちだけみたいだから、席、好きなとこ座ったら?」
 ヴァネスは、お弁当の仕返しとばかり、ちょっと意地悪く言った。
 仔仔は、少しの間そこに立ち尽くしていたが、口をキュッと結ぶと、孝天の前に立ち、身体を横にして無理矢理孝天の膝をまたぎ始めた。
「何だよ、もう」
 孝天は自分の目の前に来る仔仔のリュックを身体を反らしてよけながら顔をしかめた。
「無理だってば」
 しかし、仔仔は聞く耳もたず、身体を孝天と前座席の間にグイグイと押し込んでくる。
「あーもう!!ケツこっちに向けるなよ!!」
 仔仔は聞こえない振りで、孝天の隣に腰を下ろした。
「よいしょっと」
「仔仔ってば!!」
「わぁ、いいお天気~」
 孝天が呼んでも知らんふりで外を見ている仔仔。
「ケツ!!重いってば!!」
 スペースにおさまりきらない仔仔のお尻は、半分孝天の膝の上に乗っかっていた。
 孝天が肘で押しのけようとするが、背を向けたまま聞こえないふりで外を眺める仔仔。孝天の膝の上にハンケツのまま、動こうという気は全くない。
 ヴァネスはそんな二人を眺めながら、くくっとほくそ笑んだ。
(お子チャマどもめ)
「もう、ほら、二人とも喧嘩しないで」
「いいじゃん、阿旭。あいつらは放っておこうぜ」
 実は実生活で長男のヴァネスには、一番身近な年上の阿旭に対して兄に憧れる様な特別の思いがあった。本当は普段からもっともっと阿旭に甘えたり、遊んで貰ったりしたかったのだが、二番目に年上としては暗黙のうちに年下の二人に阿旭を譲ることが少なくなかった。
 仔仔は言うまでもなく、一見、距離を置いてる様に見える孝天も、偉そうにしながら何も言わずそういう態度を許してくれる阿旭に無言で甘えているのだ。
 そんなわけで、ヴァネスはここぞとばかりに阿旭を独占しようとした。
「あのさ、又、一緒に鍋食いに行かない?」
「え?あ、うん。そうだね」
「友達が美味しいところ見つけたんだけど、場所聞いたら阿旭のマンションの近くでさ」
「へぇ、そうなの?」
「うん、美味しくて値段も手頃らしんだ」
「いいねぇ」
「今度、仕事が空いた時にでも連絡するよ」
「うん」
 ところが、それを聞いた孝天と仔仔も「俺も!!」「僕も!!」と参戦してきた。
「何だよ、人の話にかたってくんなよ。俺は阿旭と話してるの」
「えー、ひどーい。僕も鍋食べたい」
「仔仔は孝天にカレー作って貰え。お前ら仲良しだろ?子供同士、ままごとでもしてろ」
「自分ばっか、ずりーよ。俺だってたまには外食して阿旭とゆっくり話したいよ。なかなか仕事でも一緒になれないしさ。仔仔とは毎日会ってるからもういいよ」
「もういいって、何だよぉ」
 仔仔は口を尖らせて、孝天に身体を寄せてきた。
「もう、またそうやって押してくんなってばー」
 仔仔はぐんぐん身を乗り出して、もはや孝天に半ケツどころか抱っこ状態だった。
「重いんだってば!!」
「じゃ、孝天、別の席に行ったらぁ?」
「何で俺が席を変わんなきゃなんないんだよ。自分が後から来たくせ。俺たち三人のお尻は小ちゃいの。仔仔だけ大きいんだから、仔仔があっち行けよ」
「大きくないもん、普通だもん!!三人が小さいんだもん」
「でも、仔仔が一番大きいんだから仔仔があっち行ってよ」
「あっち行けって人があっち行けばいいんだよ」
 そう言いながら、又、ぐいぐいと押す仔仔。
「あー、もう、お前ら押すなよ!!」
 仔仔が押すので、端っこにいるヴァネースも壁にぎゅうぎゅう押しやられている。
「もう。いいよ、じゃぁ、俺があっち行くから」
 阿旭が長男らしくそう言って、席を立とうとした。
「え、駄目だよ!!阿旭はここ」
 ヴァネスは慌てて言った。
「そうだよ。後から来た人が悪いんだ」
 孝天も阿旭を引き止める。
「仔仔~!!」
 ヴァネースと孝天は仔仔を睨みつけた。
 仔仔は、フイと顔を背けた。

 そうやっている間に、このバスの運転手らしいおじさんが乗り込んできた。
 運転手さんは、座席を見る事もなく席についたかと思うと、何も言わず自動ドアを閉めクールにエンジンのキイを回した。
 ガガガガガ・・・ブワーン、ブワーン
「あれ?」
 アクセルを踏み込こむが、何かがいつもと違う。
 ブワーン、ブワーン・・・
 どうやら前輪が地面にしっかりとかみ合ってないらしい。
 運転手さんは振り返って座席を見た。すると、席はガラ空きなのに四人の大きな若者たちが、後部座席にぎゅうぎゅうになって座っている。
 運転手さんは首を振った。
 「お兄ちゃんたち、駄目だよ。そんなでかいのが四人も後ろに固まって座っちゃ」
 バスは後部座席に座った四人の重みで前輪が浮き上がり、ウィリー状態になっていたのだ。
「ほら、前にきて」
「運転手さん、何か言ってるよ」
 阿旭が気づいた。
「おい、孝天。おじさん、何て言ってんだ?」
 例によって取り敢えず孝天に聞くヴァネス。
「前に来いって言ってるみたいだけど・・・」
 拗ねて窓の外を見ている仔仔以外の三人は顔を見合わせた。
「どうする?」
「仕方ない、前に行くか?」
「そうだな・・・」
 そう言うと、三人は立ち上がり、バスの中程の席に移動した。今度は阿旭を真ん中に前の席にヴァネス、後ろの席に孝天と一人づつ席を陣どった。ハッと、その様子に気がついて慌てて三人の後に続くが、またも出遅れる仔仔。仕方なくヴァネスの前の席についてみんなのいる後ろを向いて座った。
 しかし、運転手さんは又、ため息をついた。
「駄目駄目。そんな四人共同じ側に座るとカーブでかたむいちゃうだろ。ほら、お兄ちゃんとボクはこっち」
 そう言うと、運転手はヴァネスと仔仔を反対の席に振り分けた。
(ちぇっ、何で俺がこっち何だよ。あ~あ、阿旭と離れちゃったじゃんか)
 チラっと後ろを向くと、仔仔がヴァネスの席の背もたれに抱きついて、エクボを作り目をキラキラさせながらこっちを見ていた。旅館までの自分の子守り係はヴァネスだと認識したのだ。
(は~)

 やっとバスは動き始め、あまり広くない山間の道を上って行った。ヴァネスが窓の外を眺めていると田んぼや民家の瓦には雪が積もっているのが見えた。車内では阿旭と孝天は何やら楽しそうに話をしている。
「ヴァネース、お菓子食べる?」
 仔仔が後ろから話かけてきた。
「いや、いい」
「じゃ、しりとりする?」
「し・な・い」
「じゃぁねぇ」
 そう言うと、仔仔は指でヴァネスの背中に何かを書き始めた。
「あー、もう。仔仔、背中触るな。こそばいってば」
 ヴァネスは鬱陶しそうに言った。
「この字、なーんだ」
(・・・・・・)
 ヴァネスは黙って席を立ち上がり、孝天の前に立った。
「何?」
「席代われ」
「なんでだよ」
「いいから、仔仔の子守りしろ」
「何だよー。俺、久しぶりに阿旭と話ししようと思ったのにぃ」 
 口では言いながらも、しぶしぶとヴァネスの言うことをきく孝天。交代した席にドスンと腰を下ろし、不機嫌そうに前髪を右手で掻き揚げた。そんな定番の子守りを笑顔で迎える仔仔。
「仔仔、ヴァネスに何したんだよ?」
「何もしないよ。僕が出した問題が分からないからスネちゃったんだ。本当に子供なんだから」
「んなわけないだろ!!」
「車内では静かに!!」
 ヴァネスの大声に運転手さんから注意がとんだ。
「あ、對不起・・・」
「あーあ、怒られちゃった。ヴァネスのせいだからね」
「のぁにぃぃぃ~~~!!ほんとに泣かされたいのか、おまえは~~~!!」

 こうして、又もきゃいきゃいと小競り合いを始めた四人を乗せ、やや孝天+仔仔サイドに傾いたバスは、山道を走り今晩の宿『お山の上旅館』に到着した。

注:このストーリーは作者の妄想による、完全なフィクションです。

ある日のヴァネース一週間 
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2005'11'30(Wed)  sub :: ある日のヴァネース番外編:一週間 その5<前編>*  ある日のヴァネース 番外編:一週間*

 
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